パワーリフターをはじめ筋トレ界では、RIR-RPE(以下RIR)が広く使用されています。残り1回反復できればRPE9,2回ならRPE8と表現し、また、残り○○回の部分だけをとってRIR1, RIR2とも表現します。RIR名前は聞いたことはあるけど、そんなに重要なの?と思っている人が多いのではないでしょうか。RIRの真の利点は重量やトレーニング量を日々の調子に基づいて自動調整(オートレギュレーション)できることです。RIRを用いれば、システマティックに重量・セット数を決めることが出来るため、トレーニング中の迷いがかなり減ると思います。
本記事では、そんな便利なRIRの具体的な利用方法につい解説します。
<RPEの歴史>
具体的な利用法だけを知りたい方は、RIRを用いた重量設定までスキップしてもOKです。
“RPE”というスケール自体はかなり古くから、有酸素運動のキツさを示す妥当な指標として使われています。具体的には心拍数・血中乳酸等と強い相関があり、VO2maxの測定ができない場合などにおいて、利用されています。
その後、筋トレにおいても全身もしくはトレーニングしている筋肉のキツさを10段階で評価するCategory ratio-10や、図表を加えたOMNI-Resistance training scaleも広く使われるようになりました。
| CR-10 | Description of Perceived Exertion |
| RPE10 | 非常に強い |
| RPE9 | |
| RPE8 | |
| RPE7 | かなり強い |
| RPE6 | |
| RPE5 | 強い |
| RPE4 | やや強い |
| RPE3 | 中くらい |
| RPE2 | 弱い |
| RPE1 | かなり弱い |
| RPE0.5 | 非常に弱い |
| RPE0 | No effort |
RPEには様々な種類がありますが、そのどれもに共通する特徴は、”日々の体調や適応ペースを考慮しトレーニング強度を調節できる”ことです。例えば、8reps 3sets のスクワットを終えた後に、CR-10において、4(やや強)という評価だったとします。その次のセッションで同じメニューを2(弱い)という評価で終えたとすると、同じメニューを楽に終えられたので、筋力が向上したと解釈することが出来ます。%1RMのみで重量を設定していると、筋力が変化してもそれを、トレーニングに反映させるのためには1RMを測定する必要があります。1RMを高頻度で測定するのは時間も体力も使い、効率的ではありません。RPEは何となく重量を選ぶのではなく、システマティックに調節する指標といえます。
ただし、CR-10を筋トレに用いるのは問題があります。例えば、限界まで反復した時には、RPE10と評価されるべきところが、10よりも低い数字がしばしば報告される点です。これは自分のキツさの感覚だけに頼ると、気づいたらトレーニング中に、つぶれてしまうリスクがあります。筋トレにおいて、つぶれるまで追い込むことの利点は多くありません。(追い込むvs追い込まなはコチラ
また、CR-10は10段階で、レップ数が多くなると、1ポイントのRPE変化が1レップ数以上の変化を表し、正確なトレーニング処方には向いていない、可能性があります。
以上の限界点を踏まえ“残り反復回数”に基づいた指標としてRIRが開発されました。
RIRの特徴としては、まず、一般的にRIRは1ポイント程度、過小評価(RPEは過大評価)することがあり、CR10のように挙上失敗まで行ってしまうリスクは減らすことができます。また、RIRは限界反復になればなるほどRIRを正確に予想できる、低レップのセットだと正確になるといった特性があります。
つまり、RIRは、伝統的なRPEの自動調節という利点を引き継ぎ、さらに伝統的なRPEよりも、限界近くで予測が正確になるスグレモノだと言えます。
| RIR(RPE) | Description of Perceived Exertion |
| RIR0 (RPE10) | 最大努力 |
| RIR0.5 (RPE9.5) | もう1回反復はできないが、重量を上げることはできた |
| RIR1 (RPE9) | 残り1回反復可能 |
| RIR1.5 (RPE8.5) | 残り1-2回反復可能 |
| RIR2 (RPE8) | 残り2回反復可能 |
| RIR2.5(RPE7.5) | 残り2-3回反復可能 |
| RIR3 (RPE7) | 残り3回反復可能 |
| RIR4-6 (RPE5-6) | 残り4-6回反復可能 |
| RIR6-7 (RPE3-4) | ほとんど、努力なし |
| RIR8-9(RPE1-2) | ほとんど、努力なし~努力なし |
<RIRvs%1RM>
ここからはRIRの具体的な利用方法について解説します。
伝統的な重量設定方法としては%1RMがあります。
8reps @75%1RM
これは、75%限界まで反復すると約10reps できます。そのため、2reps余裕をもってセットを終わらせたことになります。 これをRIRを用いて言い換えると、、、
8reps @RIR2
となります。つまり、10reps ギリギリできる重量なので、75%1RMになります。この2つは表現の仕方が違うだけで、理論上は75%1RMを8回という全く同じ強度となっています。
ですが、実際にはそうはいきません。その75%1RMが10回repsできる重さであるというのはあくまで、平均であり、実際には9-26回もの幅があると一つの研究でも報告されています。これはある人にとっては75%1RMを8reps行っても、まだ18回余裕があり、別の人には目標の1RIRしか余裕を持たせることができないということです。
その一方で、RIRはそもそも残りの回数に基づいて重量をきめるので、誰でも、丁度よい追い込み具合の重さを選べるわけです。
また、%1RMだと、トレーニングプログラムを始めたときの1RMに基づき重量を設定するため、筋力の伸びや日々の体調の変化に応じた強度の変更が難しいです。
<RIRを用いた重量調節>
ここからはRIRの具体的な利用方法について 3sets 8reps@RIR2-4 というメニューを例に解説します。
①1セット目に8reps@RIR2-4となるような重量を選びます。実際に8reps実施します。そのセットのRIRをセット終了”後”に評価します。2-4RIRになるまで、repを繰り返すのではありません。そこで、その日の調子が良ければ、RIRがより高い数字になるはずです。その一方、疲労がたまっていると、RIRのがより低い数値となります。
②2セット目以降は前のセットのRIRに基づいて重量を調整します。調子が良く、予定より余裕をもってセットを終えられた場合(RIR5以上)は重量をあげます。逆に予定よりも、ぎりぎりだった場合(RIR1以下)は重量を落とします。RIR2-4の範囲の丁度いい重量なら、そのままの重量にします。これを最後まで続けることで、日々の調子に基いて重量を決められます。
具体的な重量の調整幅は以下の値が提唱されています。
ちなみに、RIRに2-4と幅があるのは、RIR3のように1つの数値を設定しても実際にピッタリ3になる重量を選ぶのは難しいためです。RIR予測の多少の誤差が大きく適応に影響することは考えずらいので、幅を持たせた方が使い勝手がよいですね。

Helms et al. 2018 より1セット目に、8reps RIR2-4を選ぶのが難しいという場合は、まずは75%1RMの重量を利用してよいでしょう。かりに、8reps終えた時点で、目標とするRIRではなくても、それ以降は、上の通り、RIRを評価し重量を調節すれば自動的に丁度良い刺激を得られるわけです。
実際にこのRIRの重量設定が%1RMよりも、筋力増加に効果的であるという報告があります。(Helms et al., 2018, Graham et al., 2019)
<使い方は無限大>
上では、”レップ数”を固定し、重量をRIRに基づいて調整する方法を説明しましたが、”RIR”を固定し、重量を前のセットのレップ数に基づいて調整することもできます。18レップス3セットを例とると、2-4RIRになるまで、レップ数を反復し、目標の8レップを超えれば、次のセットで重量を増やし、8レップを下回れば重量を増やします。
重量の調整以外にも、セット数をRIRを用いて、調節する方法の有効性も検証されております。これについては、今後紹介する予定です。
本記事ではRIRのオートレギュレーションを紹介しましたが、オートレギュレーションにはバーベルの速度を用いた方法等、他にも多くあります。必ずしも、RIRである必要はないですが、固定した%1RMだけでなく、何かしらシステマティックに重量を調節することが、トレーニング効果を最適化するべきだと考えています。まだまだ、多くのオートレギュレーション方法は考案されており、方法はアイデア次第で無限大です!
<参考文献>
・Helms ER, Cronin J, Storey A, Zourdos MC. Application of the repetitions in reserve-based rating of perceived exertion scale for resistance
training. Strength Cond J 38: 42–49, 2016.
・Helms E. R., Byrnes R. K., Cooke D. M., Haischer M. H., Carzoli J. P., Johnson T. K., Cross M. R., Cronin J. B., Storey A. G. Zourdos M. C. RPE vs. Percentage 1RM Loading in Periodized Programs Matched for Sets and Repetitions. Frontiers in Physiology, 9. 2018.
・Timothy Graham, and Daniel J. Cleather. Autoregulation by “Repetitions in Reserve” Leads to Greater Improvements in Strength Over a 12-Week Training Program Than Fixed Loading


Thanks!